フリースキーの大会をより楽しむ方法/ジャッジングを学ぶ

いよいよ来年の2月、北京オリンピックが開催されます。
そのタイミングに合わせて大会観戦を楽しむため、今回は大会のジャッジがどのように行われているかを解説して行きます!

※今回のジャッジはW杯などFISレースで用いられるジャッジ方法なので、X-GAMESやDEW TOURなどとは厳密には違うという事を了承ください◎

まず、フリースキーのジャッジングシステムが他競技のジャッジングと大きく違う点があります。

それは

トリック毎の基準点は存在しない

同じフリースタイル種目のモーグル競技ではトリックに応じた基準点があったり、オリンピックのタイミング以外でも注目度の高いフィギュアスケートなども動作それぞれに基準点が設けられ、加点または減点方式などで点数をつけています。

ですが、スロープスタイルやハーフパイプではそれらの基準点が存在しません。
ではどのように順位をつけているかと言うと。

「点数をつけて順位をつける」のではなく
「順位に応じて点数をつけて」ジャッジを行なっています。

・・・・・🤔??

となった方多いんじゃないでしょうか。

現状のジャジングシステムでは、相対的に選手同士比べて順位を付け、順位に応じた点数を付けています。(点数は100点満点)

下の図を見てもらうとイメージしやすいかと思います◎

どうでしょうか、なんとなくイメージが掴めたのではないかと思います。

大会の際にジャッジから「ポイントに価値はなく順位を大切にしてほしい」と選手やコーチにアナウンスされる場面も多くあります。
あくまでも順位を付け、それに応じた点数を付けているだけなんですね。なのでフリースキーの場合はフィギュアスケートの様に「過去最高得点」という価値観がありません。

ただそうは言ってもビッグエアなんかだと満点が出た事もあり、それは非常に印象深い歴史の1ページだと思います。(=X-GAMESでのボビーブラウンのSWダブルミスティー1440やヘンリックのバタートリプルコーク1620など)

少し話がそれますが、今年のX-GAMESではスロープスタイル、ビッグエア、ハーフパイプともに点数を付けずに滑りに応じて暫定順位のみを表示する方式を取り入れていたのも、根底に ↑ のような考え方があるからだと思います。

ただやはり視聴する側として点数(=数字)になっている方が分かりやすい部分もあると思います◎

次の項目ではジャッジが順位をつけるために基準としている要素に触れて行きます。

ジャッジングの5大要素

フリースキーのジャッジはフリースキーヤーの「やばい」や「すごい」といった感覚の部分を透明性をもってジャッジングするために下の5つの要素で判断しています。

各要素の詳細はこんな感じになります。

現在、どの種目でも「難易度」「完成度」は外す事の出来ない要素になっています。

誰でも出来る(=その大会で多くの選手が出来る)トリックはそこまで評価されない事が多く、誰でも出来るトリックはグラブやスタイルの変化で武器に変えて行く必要があると思います。

かといって誰も出来ないトリックや新しいトリックを用いても、グラブが取れず空中姿勢が乱れたり、着地が雑になってしまうと「ミス」として評価されてしまうため、順位は一気に下がります(=完成度が低いと判断されます)

そして次の項目ではこの「5つの要素」をもとに「順位をつけ点数をつける」ジャッジが大会で用いるオーバーオールジャッジングSBSジャッジングの2つのジャッジングシステムについて説明します◎

「オーバーオールジャッジング」

現在行われている大会の多くで取り入れられている多くのジャッジングシステムが「オーバーオールジャッジング」です。

2018年の平昌オリンピックや、現時点でのビッグエア、ハーフパイプはオーバーオールジャッジングのみで行われています。オーバーオールジャッジングでは、コースを上から下まで滑ったものを先ほどの5つの要素で選手を比べ、順位を付けて行きます。

・オーバーオールシステムのメリット
オーバーオールのメリットとしてはジャッジが少なくて運営が楽な点です。ワールドカップではヘッドジャッジを含む6名でジャッジを行なっています。

・オーバーオールシステムのデメリット
逆にデメリットとしてはジャッジ一人一人への負担が半端じゃない点です。
例えばスロープスタイルやハーフパイプでは連続してトリックをするため、瞬間でトリックを判断しジャッジングペーパーに記入する能力が求められます。
さらに予選では1人目の選手と25人目の選手の選手を比べる必要もある上に僅差の選手の順位をわずかな時間で決定しなくてはいけません。
また選手サイドとしても自分の順位に対して不安が出てしまう事が多く、それもオーバーオールのデメリットだと思います。

そこでそんなデメリットを解消するために導入されたのが「SBSジャッジング」です。このジャッジングシステムが今後のワールドカップやオリンピックで主流になって行きそうな流れになっています。

「SBSジャッジング」

「SBSジャッジング」では前項のオーバーオールジャッジングでコース全体を見るジャッジに、アイテム毎にジャッジングを行うジャッジを加えジャッジングを行います。
(SBSとはSECTION BY SECTION の頭文字を取った言葉で、平たく言うとセクションごともジャッジするぜ!という事になります)

少し複雑ですが、オーバーオールジャッジの点数、それぞれのアイテム毎の点数を決められた割合で合算し、最終的な点数で順位をつけるというシステムになっています。

下の図のような感じになります◎

かなり複雑な感じがしますが、ざっくり言うと従来通りのコース全体を見るジャッジに、各アイテム毎にどの選手が良かったかも加味して点数を付けようよって感じですね◎

アイテム毎のジャッジは、先ほど解説した5つの要素の1つ「バリエーション」の要素がなくなるため(感覚的にはビッグエアに近い)、オーバーオールジャッジがバリエーションをより評価する必要があり、やはりオーバーオール担当のジャッジの負担は変わらず大きいとも言えます。

・SBSシステムのメリット
大会関係者のストレスは減ったことがいちばんのメリットだと思います。
ジャッジ1人あたりの負担が減りジャッジにかかる時間が軽減され、選手も自分のランがどのように評価されたかアイテム単位で確認出来るようになりました。

・SBSシステムのデメリット
ジャッジの人数がオーバーオールジャッジングよりも必要になるようで、ジャッジの人材確保が難しくなったりと新たな問題も出て来ています。そのため、多くのFISレース(国際スキー連盟の管理する大会)ではまだまだ「オーバーオールジャッジング」が主流なのが現状です。

最後に

いかがだったでしょうか?
これで今までとは違った視点で大会を楽しむ事が出来るかと思います。
それぞれの選手が5つの要素のどの部分を武器にして大会を戦っているか、なんて目線で大会を観戦してもらえると違った面白さが見えてくるのではないでしょうか。

また、これから世界のコンペシーンで戦いたいと思っているスキーヤーは、自分がどんなスタイルで大会を戦って行くか、どんな戦略で戦うかを考える上でジャッジを知っておく事はマイナスにならないと思います🔥